Nuits Blanches

眠れない夜に萌えとか考察を無節操に投げつけるブログ

12月21日来日RENT/ソワレ

観てきました。日本版も映画も何だかんだ後回しにしてきて未見なのでこれが初RENT。

結論から言うと良いもの観ました。観劇納めがこれで良かったです。そういえば去年も来日公演が観劇納めだったな。

 

現代(正確には90年代アメリカ)に産み落とされた若者たちが必死に生きる様を描いたミュージカル。出てくる若者はほぼ皆「普通の世界」に残れず、なんか氏らの欠落を抱えて生き延びている。その欠落が愛だったり、金だったり、仕事だったり、希望だったり、未来だったり。それは現代日本を生きる若者もそうだと思う。お金がなかったり、精神的充足感に欠けてたり、場合によってはセーフティネットからさえも見捨てられている人さえいるのは、今さら繰り返すことではないだろう。

私は長らくRENTがなぜ熱狂的なファンを持つに至ったかわからないでいた。失礼ながら、バラードからロック、タンゴ等々、その種類を問わない作曲の才能とメロディーラインの素晴らしさ、そして初日のジョナサン・ラーソンの死で神格化されたのだろう、ぐらいにしか思ってなかった。個人的に曲はそこまで好みではない(ただジョナサン・ラーソンの才能は認めてしかるべきだと思うので、今まで見てきたミュージカルの中ではそれなりのランクに位置づけるべきだとは思っているが)し、そもそも今日にいたるまで舞台も映画も見ていなかったので、食わず嫌いとまではいかずとも軽視していたという事実は否定できない。

でも今日実際に舞台を観て熱狂的なファンが存在する理由がわかった気がするのだ。舞台にいるキャラは皆自分の欠落を知ってなお、自分のため人のため、たとえその姿が醜くなろうとも生き延びようと決めている。その生き様からは剥き出しの美しさが、まるで地上から見上げられる星のように煌めき続けている。その美しさは、「普通の世界」から脱落し失望した――あるいは脱落していなくてもその世界に希望を見ることをあきらめた――人間にはとても眩しく、また逆説的にこの種の人間が最も欲してやまないものであることに私は疑問を挟めない。恐らくこうした人々が"レントヘッド"となって、今の自分の全てを肯定し生きているのではないだろうか。「今」と「自分」を認める鮮烈な人間讃歌のミュージカルはきっと、未来でも愛される傑作に違いない。

 

キャストに関しては来日なので具体的には言えないが、ほぼ20代前半という非常に若々しいキャスティングで驚いた。きっとその若さがそのままパワーとなってダイレクトに観客に届くんだろう。そういえばカテコで日本人の諦めの悪い手拍子に根負けしてキャストがもう1度舞台に戻ってきてくれたわけだけど、その際には数人手にスマホを持って観客が入るように自撮りしてたのには笑った。超現代っ子だった…笑