Nuits Blanches

眠れない夜に萌えとか考察を無節操に投げつけるブログ

4月22日ハムレット/マチネ

加藤和樹はいつまで復讐してるの?

 私ファンとはいえ全部の舞台作品追ってるわけじゃない(※今年は全部追う予定です)からわからんけどさ。少なくとも1789はお父さん殺されて復讐するお!ってパリに行っちゃうし観てないけど17年舞台の真田十勇士も復讐するお!ってなったらしい(?)し、フランケンは復讐の塊だし。レアティーズもお父さん殺されて復讐するお!じゃん。あれ、要するにレアティーズはロナン・マズリエじゃん?(?)

まあそんな冗談はいいんですけど。というか古典作品でも地べたに這いつくばってるのホントぶれねえな。好きだけど。

一応褒めておくとそもそもあの豪華ベテランの中にオーディションで勝ち抜いたってすげえなって話だし殺陣最高だしオフィーリアとの美男美女な絡み最高だしポローニアスとの家族な絡み最高に可愛いです。そこちょっと動きがドスドスしてるとか言うな!あと結局歌わされてるし旅一座のところで軽くアクロバット的なことしてるし琵琶みたいなのも弾いてたしアナタ色んなものケアードにバレてるじゃない!

 

わしハムレットは丁度松岡和子さん訳で2~3回は読んでるんですよ。完走はしたけど訳が難しくて投げた福田恒存訳も1回見たけど。予習で松岡訳もう1度読もうと思ったら完走しきれずに当日になってしまった。レアティーズ帰還までは読んだはず。

まあ何度か読んだことはあるにせよ実際に舞台になるとどうなるかまではわからんかったんですよね。戯曲はきっとこんな調子で言うんだろうこんな場面転換になるんだろうとか想像しながら読むんですけどまあ実際に(ストレートで)観たことないからどうなるか結局わからないわけですよ。

今回は14人だけ・生死と生殺与奪の円環・和風と来てるから古典とはいえかなり特殊な部類ではあると思うけど、なるほどここはこうなるのか!と自分の中に溜まってたハムレットの台詞とか役が劇を観ながら昇華されてった感じがあった。頭フル回転だったけど楽しかった。劇場出た瞬間頭ゆでダコ状態で軽く頭痛起こしましたけど。

そういえばついったでも「長くて寝そうになった」って言ってる人いたし隣の人もうたた寝してたんだけど、ハムレット並に古典で知れ渡ってる作品だとあらすじの重要なポイント以外わかんねーやってなっちゃうのかもなー。それこそシェイクスピアだと観に行く作品を先に読み込んでおいて「どういう演出になるのかな」って考えながら観るのが現代においては1番いい楽しみ方なのかもしれん。

 

いやあしかしジョン・ケアードはすごい。さっきも書いたけどハムレットで生死と生殺与奪の円環を暗示させる演出なんて誰も考えつかねえわ。ハムレットはフォーティンブラスとして出て来る=なれるはずのなかったデンマーク王になるし、クローディアスは先王ハムレットと同じ役者だし、なんならポローニアスは死んだとき墓掘ってもらえなかったから自分で墓掘ってたぞ。レアティーズは劇中劇で王位簒奪する役をしてて後の展開たる「レアティーズを王に」を予感させ(まあ結局王位簒奪しないんですけど)、オフィーリアは溺死してレアティーズに見送られた後オズリックとして蘇ってレアティーズを見送る。そしてその円環構造から微動だにしないただ1人の人物、ホレイショー。すげえや流石ケアード、脱帽モノです。

 

個別のところを挙げると、貫地谷しほりちゃんがとても可愛かった。ポローニアスが殺されて狂っていくところは涙を流さずにはいられなかったよ。凛としたうら若い女性が狂って色んな花にまみれて口紅もぐちゃぐちゃにした揚げ句死んでいくの、あれはレアティーズじゃなくたって怒るよ…。

ベテランは皆様ほんとに素晴らしかった。そこに立っているだけで貫録と存在感があるから、その人を見ないわけにはいかないんだよ。和樹が役替わりしてる時も見落としそうになった(実際いくつか見落としたかもしれない)し、キャリアと個性を確立したベテランの凄まじさってそこにあるんだなあ。

見落としそうになったとは言ったけど、和樹だってよかった。若さゆえにベテランがマジョリティを占めるこの作品ではやっぱりキャリアと個性という点から見るとどうしても弱くなるけど、それは現状どうこうしたところで押し返すことは出来ない。でも今みたいにコンスタントに舞台活動を続けてくれればきっと得られるものだし、ベテランに囲まれてるからそのエッセンスを少しでも和樹の中に蓄積してほしいなと思う次第です。少なくとも今回の演出のレアティーズとしてジョン・ケアードに認められたんだし。

 

p.s. オフィーリアが狂って渡していた花:ウイキョウオダマキがガートルードに、ヘンルーダがクローディアスに